ヘッダイメージ



八柏氏
柏か?
(出自不詳)
・参考として丸に柏紋を掲載。


 かつての秋田県大雄村八柏(やがしわ)に、中世武家館の遺構である八柏館がある。八柏館は小野寺氏家臣の八柏氏の居館であった。鎌倉時代に小野寺氏が下野より雄勝郡の地頭職に任命され下向してきたとき、その家臣のひとりとして落合十郎が従ってきたという。その落合十郎の末裔が、寛正元年(1460)に八柏に入城し、八柏大和守道友を名乗ったのが八柏氏のはじまりという。
 それ以来、八柏氏は小野寺氏の重臣として、周辺諸豪族の平定戦に活躍した。八柏氏は武略に優れ、常に小野寺氏に勝利をもたらしたという。 八柏氏の活躍のうちで特筆されるのが、戦国末期の天正十四年(1586)に小野寺氏と最上氏が戦った「有屋峠の合戦」であろう。
 小野寺氏攻略を目論む最上義光が兵を北進させると、八柏大和守道為は小野寺軍を率いて出陣、智謀と軍略をもって最上義光に大勝利したのである。以来、最上義光は仙北には進出できなかったという。道為は庄内の大宝寺義勝や越後の本庄繁長と親交を深めて、最上義光を南北から圧迫したのである。
 『奥羽永慶軍記』によると道為は「八柏大和守掟条々」三十一ヵ条を残したことが記されている。

「八柏大和守掟条々(一部)」
(1)戦場で大将の命令に背いてはいけない。ただし勝利が確実の時は背いても構わない。
(2)他人の討ち取った首を奪えば死罪とする。
(3)他国を臆病で退出したものは召抱えてはならない。
(4)敵方の使者をむやみに斬ってはならない。
(5)他国を攻めようとするときは、大将の命令を受けて行え。
(6)収穫前の敵方の稲を刈り取ってはならない。
(7)味方の不利を見棄て逃げるものは死罪とする。
(8)味方の砦の包囲を救わず、他の戦いをするは、たとえ勝利しても賞に値しない。
(9)喧嘩は親類朋友であっても関与してはならない。
   両者臆病のため討ち果たさぬときは双方を死罪とする。
(郷土史辞典「秋田県」(昌平社)より引用)

 この「掟条々」からもうかがえるように、八柏道為は小野寺家を支えた名将であった。

大和守の不運と八柏氏の滅亡

 知謀にすぐれた八柏大和守の存在は、勢力拡大を目指す最上義光には「目の上のたんこぶ」そのものであった。最上義光は八柏大和守を排除するために、得意の陰謀をめぐらした。そして、文禄三年(1595)の正月、大和守の主君小野寺義道は最上義光の謀略にかかった。小野寺義道は、みずからの柱石ともいうべき八柏道為を殺害してしまったのである。
 八柏大和守の叔父孫七は湯沢城を守り、小野寺姓を許されて小野寺美作守を称していた。大和守を除いた最上義光は、楯岡豊前守を大将として湯沢城を攻撃した。最上軍の攻撃に対して湯沢城は、孫七の嫡男孫七郎と弟の孫作の兄弟が堅く守備していた。最上勢は三方より城を包囲したが、城主の孫七郎はもはや逃れることができないと覚悟を決め、弟の孫作に兵三百をついけ、みずからは五百の兵を引き連れて湯沢城から出撃した。
 兄弟の奮戦は目覚ましかったが、弟の孫作が討ち取られ、最上氏に味方した由利衆が湯沢城に攻め込んだ。ついに孫七郎は「これまで」と覚悟を決めて妻子を刺し殺すと、残った兵三百余人を率いて打って出て、力の続く限り戦った。しかし、さすがの孫七郎も力尽き、城に引き揚げると腹十文字に掻き切って自害した。
 かくして湯沢城は落城したが、湯沢城が奮戦しているとき小野寺義道は横手城にあり、援軍を送ろうとしたが周囲には虎視眈々と狙う者が多く、ついに、孫七郎兄弟を見殺しにしたのであった。大和守道為を義光の陰謀によって殺害し、ついで湯沢城主小野寺兄弟を失うかたちとなった義道はまことに暗愚の将というしかないだろう。
 その必然の結果として、道為亡き後の小野寺家は一気に衰退していった。さらに小野寺義道は、慶長五年(1600)の「関ヶ原の合戦」に際して、最上氏との対立関係から西軍に加担して所領を失う結果となった。そして、義道ら一族は石州津和野の坂崎出羽守のもとに配流され、仙北の名門小野寺氏は没落したのであった。この事態を泉下にある八柏大和守はどのような気持ちでみただろうか。



■参考略系図


バック 戦国大名探究 出自事典 地方別武将家 大名一覧

応仁の乱当時の守護大名から国人層に至るまでの諸家の家紋 二百六十ほどが記録された武家家紋の研究には欠かせない史料…
見聞諸家紋


戦場を疾駆する戦国武将の旗印には、家の紋が据えられていた。 その紋には、どのような由来があったのだろうか…!?。
由来ロゴ 家紋イメージ

地域ごとの戦国大名家の家紋・系図・家臣団・合戦などを徹底追求。
戦国大名探究

人には誰でも名字があり、家には家紋が伝えられています。 なんとも気になる名字と家紋の関係を モット詳しく 探ってみませんか。
名字と家紋にリンク

www.harimaya.com