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伊地知氏
●井桁/宝結び
●桓武平氏秩父氏流
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伊地知氏は桓武平氏良文流で、秩父重弘の孫重光を祖とし越前国伊知志（地）から起った。重光の弟は畠山重忠で、鎌倉武士の典型として知られた武将である。重光の曾孫時季のとき、越前守護として井筒城に拠り伊地知を称したのが始まりというが、時季が越前守護になったという説はそのままには信じられない。一説に、時季は畠山重忠の孫とするものがあり、島津忠久が時季を越前に置き、のちに薩摩に移したのだともいう。ちなみに、島津忠久の二男忠綱は越前を領して越前島津氏の祖になっていることから、そこらへんのところが混乱して伝えられた可能性もある。
南北朝の内乱に際して、ときの井筒城主伊地知季随は南朝に心を寄せていたが、表面は北朝を装っていた。そのような季随を隣接した豪族の某（名前不詳）が、足利尊氏に裏切者であると讒言した。これを聞いた尊氏は讒言をそのまま信じ、季随をとらえて獄に下した。
島津貞久の子氏久はかねてより季随と親しかったこともあって、季随のために労をとった。貞久は尊氏に従って功労も多く、なかでも尊氏と菊池氏が戦った「多々良浜の合戦」では、尊氏方の勝利に大きく貢献していた。そのような貞久・氏久の骨折りによって、季随は自由の身となった。島津氏の恩を徳とした季随は氏久に従って筑前に赴き、金隈城において菊池氏と戦った。
この戦いは、貞久が尊氏から給わった領土を保全するための戦いであった。戦いは島津方の敗北に終わり、季随は氏久の身代わりとなって戦死を遂げた。氏久は季随の死に報いるため島津の姓を許したが、嫡子の季弘は越前秩父伊地知の姓を離れ難く、二男の正真が島津を名乗り島津田島を称した。
伊地知氏の活躍
季弘の後、伊地知氏は多くの庶子家を出しながら代を重ね、戦国時代に至った。伊地知氏がもっとも全盛を誇ったのは、九代重興の時代であった。元亀二年（1571）、重興は肝付兼続と結び、さらに大隈の豪族寝寝重長らとともに兵船三百余をもって海路鹿児島に押し寄せた。重興らは帖佐滝ケ水を攻撃したが、島津氏の部将平田氏の防戦によって、戦果のないまま兵を退いている。
重興は一族の伊地知重矩を小浜城に入れ、早崎城と結ぶ防御線を布いた。伊地知・肝付・寝寝連合に対する島津義久は、小浜城を攻撃したが容易に落ちず、業を煮やした義久は、寝寝重長を味方に引き入れる工作に着手した。
義久の甘言にのった重長は、天正元年（1573）、連合軍から脱落した。重長の裏切りを知った肝付兼続は子兼亮に出陣を命じ、兼亮と重興はただちに大根占と大姶良の境にある横尾峠に兵を出した。兼亮と重興らは重長の兵とこれを支援する喜入季久の連合軍を迎え撃ったが、戦いは伊地知・肝付方の劣勢となり、ついに兼亮と重興は兵を引き重興は大隈垂水に帰った。
かくして、島津義久・義弘・歳久ら島津家と肝付兼亮・伊地知重興連合軍との対戦は、早崎城、入船城を舞台に何度となく繰り返された。天正二年（1573）肝付氏と島津氏の決戦が行われたが肝付方の安楽備前守が和睦、開城してしまったため、ついに重興も田上・高城・新城などの地を差し出して降伏した。義久も伊地知重興の降伏をいれ、本領の内下之城一ケ所三千八百石を安堵した。
以後、伊地知氏は島津氏に属し、重興の孫重順は天正九年の相良氏との戦いを初陣とし、同十二年には肥後堅志城攻め、同十四年には大友氏征伐の陣に加わり豊後に攻め込んだ。文禄二年（1593）の朝鮮の役には船奉行を勤めたが、帰国後、朝鮮の役における罪を咎められ領地没収の処分となった。重順が朝鮮でどのような罪を犯したのかは不明であり、領地没収は島津氏による旧国人取り潰し策の一環であったと思われる。
その後、慶長六年（1601）に至って恩免を蒙り、采地五百石を給わった。そして、重直のとき秩父氏に復し、嫡流以外は伊地知氏を名乗ったが、のちにまた伊地知氏に復姓して近世に続いた。・2005年1月5日
・家紋：宝結び
【参考資料：垂水市史/「さつま」の姓氏】
■参考略系図
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