『尊卑分脈』によれば、高階氏流となっている。足利氏の根本被官であり、代々足利家の執事を務める。鎌倉時代は足利家の家政全般を統括していた。室町幕府が成立するに及び、公的な執事となって尊氏を補佐した。南北朝の動乱において各地の合戦に功があり、一族で河内・武蔵ほか十数ケ国の守護を歴任した。このほか、師直が引付頭人、師泰が侍所頭人、師冬が鎌倉府執事を務めるなど、幕府の要職に就任している。 高師直は、尊氏の右腕として南朝方の北畠顕家や楠木正行らを打ち破ってその勇猛をうたわれた武将だが、吉野の行宮を焼き払ったり、天皇などの権威にいささかの敬意も払わない新人類であったようだ。師直の逸話のひとつに、都には天皇という人がいて内裏や御所があり、その前を通るのにいちいち馬を下りるのは面倒な。いっそ木か金で天皇を作って「生キタル院、国王ヲバ何方ヘモ皆流シ捨テ奉ラバヤ」と言ってはばからなかったことが伝えられている。 また、塩冶判官高貞の奥方に横恋慕して高貞を失脚させたりもしている。これは『仮名手本忠臣蔵』において、吉良上野介に見立てられるもととなった。このような行動が、かれをして「好色な悪党」の代名詞となさしめたようだ。しかし、師直の伝統をものともしない革命的精神は、戦国時代に登場する斎藤道三や織田信長らの魁となるものといえよう。 高一族は、足利直義と師直の反目が嵩じた「観応の擾乱」において、師直・師泰らが討滅されると、衰退の一途をたどった。以後、わずかに師秋の系統が関東へ移り、鎌倉公方、古河公方の近習として仕えるにとどまった。 高氏からは大平・彦部・三戸・南・大高など多くの庶子家が分出した。かれら高一族も最盛期には数ケ国の守護を歴任したが、観応の擾乱以降は南宗継・大高重成・重茂らの活躍が伝えられるばかりで、一族の多くは関東へ下って鎌倉公方の近習として仕えた。 ■参考略系図 |
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